イメージと具体性②

前回のつづきです・・・

2つ目は、生徒さん自身が他の人が弾いていたのを聴いて弾きたくなったというHauted tree(幽霊の木・魔法の木)のタイトルの付いた曲。

楽譜の冒頭には Quickly mysterious(急速に、神秘的に)と指示されています。

ちょっと不気味な、不思議な雰囲気が漂よう、短くもストーリー性を感じる音楽です。

どんな風に工夫したら標題のようなイメージに聴こえるでしょう?

 

A(a/a')-B(b/b')-A(a/a')-codettaの形式。

Aは左手でメロディーを奏でます。

チェロや柔らかいバリトンボイスで歌っているような音色で。

右手は伴奏を担っていますが、ただ音を刻んでいるのでなく、ハーモニーの変化と急き立てられるようなリズム性を感じて。

そして、クレッシェンド・デクレッシェンドの表現が鍵!

簡単に言えば「だんだん強く」「だんだん弱く」です。

しかし、例えばクレッシェンドだと単に「だんだん強く」に留まらず、そこに音が膨らんで行く感じ、迫ってくる感じ、色合いが濃くなっていく感じ・・・と言ったニュアンスを加えると豊かな表現に繋がります。

具体的には実際弾いて伝えますが、それを参考に自分の出す音を良く耳で聴きながら鍵盤を押すタイミングとスピードで調節していきます。

 

Bは転調し、右手でAのメロディーをモティーフに展開して行きます。

ソプラノのハイトーンボイスやフルートの音色を参考にすると良いでしょう・・・

これまでと異なるsf(特に強く)と指示された各メロディーの最初の音のニュアンスが大切です。

但し、p(弱く)の中で効果的に!

そして3度目のフレーズで冒頭のsfが無いところが鍵。

また、右手の内声と左手で音の溶け合った伴奏型を創り、バランスよく保てているかも重要。

この中間部の変化でコントラストを描き、全体の構成力を高めます。

 

codettaはやはりAのモティーフですが、高音から低音まで一気に駆け下り、消え去って行くミステリアスな雰囲気で閉じます。

ここでも他の楽器で演奏したらどんな感じになるかを想像すると面白く、上手く表現できます。

 

細かい音符を粒をそろえて弾けるようになってきたこと、ふさわしいテンポまでアップしてきたことなど、沢山練習してきた成果が出ています!

その中で更にどんな味付けにするのか、実際それが表現できているか・・・は更に磨きをかける必要があります。

「ここまで頑張ったのに、まだ色々あってしんどいかな?」と尋ねると、

「できそうだから、もっとやる!」との頼もしい答え。

 

音楽に向き合う時、音楽そのものが研ぎ澄まされるとともに、積み重ねや追求する姿勢によって身につくものが沢山ありますね!

次回をまた楽しみにしています。