今回は映画音楽としても有名な3曲です。
まず、「魅惑のワルツ」から…
パリで活躍したイタリアの作曲家フェルモ・マルケッティが1904年に作曲したFascination (魅力)は、「スロー・ワルツの女王」と呼ばれたポーレット・ダルティのためのナンバーでした。
(同時代にはエリック・サティが「ジュ・トゥ・ヴ」(あなたが欲しい)を書いています。)
フランス語の他、英語の歌詞もつけられ、ジェーン・モーガン、ダイナ・ショア、ディック・ジェイコブス、デイヴィッド・キャロルなど多くの歌手が歌っています。
そして、作曲から50年が経過した1957年、ゲイリー・クーパー、オードリー・ヘップバーン主演のロマンティック・コメディ「昼下がりの情事」で使用され一躍有名になりました。
そして、「スカボロー・フェア」
タイトルは、イギリス北東部ヨークシャー州の海沿いの町“スカボロー”で催される“フェア”(市:のみの市や見本市の“市")と言う意味。
イギリスの16世紀頃のバラッド(物語的な曲)を元に、サイモンとガーファンクルが新たにメロディーを付けました。
また、歌詞には長期化するベトナム戦争に対する独自の反戦の詩を織り込み、1966年にリリースしました。
翌年にはダスティン・ホフマン主演の青春恋愛映画「卒業」の挿入歌にも使用されました。
スカボローの市に行くのですか?
パセリ、セージ、ローズマリー、タイム…
そこに住むある人に 私を覚えているかと尋ねてください。彼女は かつて私が本当に愛した人です。
…と始まる不思議な詩。
騎士に扮した妖精が通りすがりの商人に声をかけ、現世から連れ去ろうとしている設定のようです。
色々なハーブの名前は魔除けの呪文。商人は中世に流行したペストの予防薬とされたハーブをここでも厄除けとして呟いたとか…
おしまいは「ララのテーマ」
1965年のアメリカ・イタリア合作映画映画「ドクトル・ジバゴ」は、戦争やロシア革命に翻弄され、波乱に満ちた人生が描かれています。
詩や音楽を愛する医師・ジバゴ、複雑な恋愛を経験してきたララの壮絶な愛と別れの物語。
劇中では「ララのテーマ」が幾度も流れます。
映画はアカデミー賞5部門を受賞。音楽を担当したモーリス・ジャールは「アラビアのロレンス」に続き、作曲賞を受賞しました。
原作はボリス・パステルナーク(ロシア)の小説ですが、当時のソ連共産党から政治的理由で小説の発売を禁止されたものの、イタリアで刊行されると、18か国で次々に発売。
遂にノーベル文学賞授与にまで!
しかし、ソ連当局が彼に作家同盟除名など圧力をかけ、受賞は辞退に追い込まれましたそうです。
それでもノーベル委員会は辞退を認めず、パステルナークは受賞者として名を刻まれています。
映画をご存知の方もそうでない方も、ご一聴いただけましたら嬉しいです。