「アヴェ・マリア」と題された作品は数多く存在しますね。
私が思い浮かぶものを書きますと…
◆1500年代・ルネッサンス期に活躍したアルカデルト(聖歌隊のハーモニーが頭の中に響きます)
◆フランス・オペラ「ファウスト」などで有名なロマン派の作曲家グノーがバロックの大家・バッハの平均律のプレリュードを伴奏に用いて作曲した歌曲
◆歌曲の王シューベルトのドイツリート(湖の畔のマリア像に祈る乙女エレンを題材にしています)
◆イタリア歌曲ではトスティ、ルッツィの作品
◆ピアノの初級のエチュード、ブルグミュラーの25の練習曲にも聖歌隊やオルガンを思わせる4声体の楽曲が…
◆イタリア・オペラの巨匠ヴェルディの「オテロ」(シェイクスピアのオセロが原作)ではタイトルロールの妻デズデモーナが静かに歌うアリアがあります。
そして、今回はそれ以外の「アヴェ・マリア」です。
ひとつはマスカーニのイタリア・オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」(田舎の騎士道といった意味)の中でオーケストラだかで演奏される間奏曲をメロディーにマッツォーニが詩を付けて誕生したもの。
オペラは愛と裏切り、復讐と絶望といった悲劇が展開しますが、この曲はストーリーと関連が無い、別作品として単独で演奏されることも多い人気曲です。
苦悩の中にあって聖母マリアに慈悲を祈り求める歌曲です。
もうひとつは、ルネッサンス~前期バロックに活躍したイタリアの作曲家カッチーニの「アヴェ・マリア」として定着していた作品。
実は20世紀ロシアの作曲家でリュート奏者のヴァヴィロフの歌曲なのですが、ヴァヴィロフは自身の作品を他の有名な作曲家の楽曲として世に出すこともあったので、上記のような事態が起こったのです。
しかもその作曲家の時代的な特徴や作曲スタイルを気にしなかったようですが、この曲も美しくピュアなメロディーとハーモニーが魅力的で、こちらも人気のある楽曲です。
今回はこの2つの「アヴェ・マリア」をピアノソロにアレンジして演奏してみました。
マスカーニの作品は原曲に原則忠実に、ヴァヴィロフの方は様々に展開させました。
その辺りもお楽しみいただけたら…と存じます。