少年の心に響いた鐘

今日の1曲はプレリュード(前奏曲)嬰ハ短調「鐘」

大作曲家で大ピアニスト・ラフマニノフの原点のような作品で、この曲で一躍脚光を浴びました。

モスクワ音楽院主席卒業した翌年に作曲した5曲から成る「幻想的小品集」の第2曲目で、モスクワのクレムリン宮殿の鐘の響きにインスピレーションを得たと言われています。

 

1873年、ロシアのノヴゴロド州で裕福な貴族の家系に誕生したラフマニノフは、4、5歳の時には音楽的才能を見いだされます。

しかし、9歳の頃には一家は破産しペテルブルグに移り、ペテルブルグ音楽院の附属音楽学校入学するものの、両親は別居、妹は病で亡くなるなど、少年の心に思い陰をもたらした事でしょう。

色々問題を起こすやんちゃな少年でもあり、12歳の時にはモスクワ音楽院年少部へ転校し、厳しくも実りある教えを受け、ピアノ、作曲の才能を開花させて行きます。

チャイコフスキーには特に認められ、彼も大変尊敬していたようです。

18歳でピアノ科を首席卒業し、金メダルを受賞、翌年は歌劇「アレコ」を作曲し、作曲科も同様に首席金メダルと素晴しいキャリアを積んで行くのです。

その年の秋、この嬰ハ短調の前奏曲を初演し、熱狂的な人気を得たそうです。

 

多感な少年時代から聴いたモスクワの街に響く鐘の音は、耳に、頭に、心に留まり、この作品以降でもモティーフになったり、その断片が登場したりします。