ピアノに限らず、西洋音楽につきものなのが、「ドレミ…」と言う音の名前。
まさしく音名と呼んでいますが、この「ドレミファソラシ」はイタリア語で、日本音名は「ハニホヘトイロ」(なんでイロハニホヘトは無いのか?は別の機会に…)、英語ではCDEFGAB(なんでABCDEFGでないのか?も同様に…)になります。
音楽の授業で習いましたね?
さて、今日は、そのドレミのお話。
「ドはドーナッツのド、レは…」皆さんよくご存知のミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」で主人公・マリアが子ども達に音楽の基本を楽しく手ほどきする「ドレミの歌」がありますが、そもそも、ドレミの「ド」って何でしょう?
この音名が確立されたのは17世紀、音楽史ではバロック。
そして更に起源をたどると、その前に元になるものが存在します。
今から1000年前、中世イタリアの修道院の少年たちに聖歌を指導し、後に司教のもとで歌唱指導や音楽理論家として活躍した「グイド・ダレッツォ」と言う修道士がいました。
それまでグレゴリオ聖歌を教えたり、歌ったりするのにモノコルド(1弦の楽器)や聖職者の口伝えによって音程をとって継承されていましたが、それでは不確実で、覚えるまでに時間もかかるため、正確で効率的な方法を模索していました。
そこで、聖歌で特に親しまれている「聖ヨハネ賛歌」(下の楽譜)を用い、音高を覚えることで素晴しい成果を得たのです。
これだけでは良くわかりませんよね?
では、これは如何でしょうか?1つずつ音が上がって行きますね。
この順番に高くなって行く旋律をチョイスした着眼点がスゴイです!
「冒頭の音に注目し、このメロディーを正確に覚える事で、音の上がり下がりの特性を記憶する。そうすれば聴いたことの無い聖歌でさえも子どもたちは3日もしないうちに簡単に歌えるようになった。これまでは何週間たってもこんなことはできなかった。」と言う内容の手紙を残しています。(ミカエルへの書簡 1028~1029年頃)
上の楽譜は4線譜ですが、この記譜法もダレッツォの考案したものでした。(記録として残すことも可能になったのです!)
その後、現在も使用されている5線譜に書き直してみると更に良くわかって頂けると思います。
Ut queant laxis
Resonare fibris
Mira gestorum
Famuli tuorum
Solve polluti
Labii reatum
Sancte Johannes
このラテン語の詩、各フレーズの最初の単語の1シラブルを音階の音の名前に当てたのです。
このように「ドレミファソラシ」と、なりま…せんね!?
17世紀になって発音のしにくいUtはDomine(主=御子イエスキリスト)のDoに変わり、それまで6つのシラブルで成り立っていたものからもう1つ増やしSiを加えてオクターブに到達する形が完成したようです。
(フランスではUtが残っています)
聖ヨハネ賛歌の最後のフレーズ、Sancta Johannes からSiになったのですが、ラテン語ではJはIの変種だそうです。
これで、めでたくドレミファソラシの原型ができました。
厳密にご説明するにはもっとスペースを要しますので、今回はご紹介がてら、この辺りで…。