かつで国内外を問わず、南の島が気に入ってよく出かけていました。
沖縄、奄美大島、宮古島・・・夏の太陽は灼熱ですが、紺碧の海と色とりどりの熱帯魚、人々の素朴で温かい人柄は大変魅力的でした。
また、海外旅行の定番のハワイは勿論、タイのプーケット島や、シンガポールとその周辺もリゾート気分を満喫できる異空間で何度となく旅しました。
こちらは、日本の夏以外の時期に訪れる方がギャップを楽しめ、また気候的にも安定していますね。
そんな旅先での思い出を…ただし、ロマンティックなメモリーではなく、思いがけないハプニングの物語です。(笑)
「アンダマン海の真珠」と呼ばれる島、プーケット。
ホテルはプライベートビーチが完備され、また、別に備えられた屋外の広大なプールでは、サイドやバーカウンター等で新鮮なフルーツやドリンクを楽しみながら、宿泊客は各々思い思いに優雅な午後を過ごしていました。
私は同行してたお連れさんとは暫し別行動で、少しばかり涼もうと開放されているラウンジに向かったのですが、近づくにつれピアノの音色が聞こえてきます。
それも雰囲気に似つかわしくないタドタドしさ…でも、何故か憎めない温かい音なのです。
弾いていたのは恰幅のいい年配のフランス人男性でした。
勿論一般客です。調子はずれでリズムも所々崩れたブギウギ・・・。
「ブギーは最高!イェイ!」と言っているであろうフランス語を時々合いの手のように自ら入れながらエンドレスに弾き続けていました。
ちょっとシャツを羽織っただけの恰幅のいい水着姿が、また一層可笑しさと愛らしさを際立たせます。
ふと目をやると、傍らには奥様らしき女性が。
「あなた、もういい加減にしてちょうだい!」と言っているであろうフランス語を投げかけるものの、ブギウギピアニストはどこ吹く風…
呆れ顔の奥様をヨソに、どうやら私(=奥様を除き、たった一人の観客or聴衆)に気づいた様子で、ますますノリに乗りまくり、♪ジャーカ ジャーカ ジャーン ジャーン…♪と、嬉しげにf(フォルテ)でサービスしてくれました。
気を良くした彼は、私がフランス語を理解できないのを察知すると、今度は英語で「音楽は好きかい?君も何か楽器は弾けるの?」と尋ねてきました。
若かりし当時の私は「はい!弾けますよ。ピアノなら…」と、彼のブギウギに負けないくらいのタドタドシイ英語で答えたら、彼も奥様も大喜び。(マダムの方はご主人のピアノのお付き合いにうんざり気味で、解放を待ちに待っていたようです。)
それでクラシックの小曲を1、2曲弾いた所、二人とも更にご満悦で、「もっともっと・・・」とリクエスト。
そのうち「今度はワシが弾くよ!」と交代して、まるで「ジョイントコンサート」。
そうこうするうち、グランドピアノの周りに続々と人々が集まり、外国人独特の「自分達も思いっきり楽しもう」精神と「持ち上げ上手」なリアクションで大いに盛り上がりました。
更にチャイニーズ系の若者が 「僕のピアノも聴いて欲しい」と名乗りをあげ、ベートーヴェンの「悲愴ソナタ」を立派に演奏。
聞くと、香港から家族で来たとか。そのホテルでは私たち東洋人の宿泊客は珍しく、しかもフランス人のオジサンのブギウギとの妙な組み合わせは、何ともユニークだった事でしょう。
自分だけマトモなように書いていますが、実は私も水着のまま弾いていたんですから、人のことは言えません。(笑)
ただし、ロケーションは屋内と言え、眼前にプールを臨み、太陽が燦々と射す開放感溢れるラウンジでのエピソードとして想像して下さいね。
南の島で偶然出会った人々や出来事の中に音楽が共通項としてあった為、想い出深いハプニングに発展しました。
昨今、流行りのストリートピアノのハシリのような光景でしょうか?
滑稽で愛おしい思い出です。
この地にまつわる事と言えば、スマトラ沖地震で発生したインド洋大津波で甚大な被害があり、勿論1旅行者としての関りしかない私には何もできずにいた私でしたが、ある方からのご縁で愛知県の2市で2日に渡り開催された「スマトラ沖地震チャリティーコンサート」に出演させて頂きました。
人生も旅のように、色々なハプニングがあり、それが妙味で刺激的なのですが、アクシデントは出来るなら避けたいものです。
もし遭うとしても、乗り越えられる試練にとどめて欲しい。
この度の大きなコロナショックは今後、どのような未来に繋がるのでしょうか?
ポジションにより意識や思いが違い、当然意見の相違もあるかと思います。
その中で、それぞれが心がけて出来る事を大切に行い、喜びが甦るようにしたいです。
かつての思い出のようにはいかなくても、新たな楽しみが見出せるように。