情感たっぷりに哀愁漂うTempoのゆったりした部分:ラッサン(ラッシャン)と、ノリの良いリズムで技巧を凝らし、熱狂的に突き進んで行くTempoの速い部分:フリスカ(フリシュカ)によって構成される「チャルダッシュ」は、遊牧民・ロマの人々の専売特許のように知られています。
しかし、元々はオーストリアの王室・ハプスブルク家率いるオーストリアに支配されていたハンガリー王国が兵士を募集方法に起源があるようです。
軍隊生活の楽しさをアピールするため、チャルダ=酒場で募兵を行い、ダンスで盛り上げていたとか。
そしてハンガリーの一般の人達の間で好んで踊られ、ロマの人々の民族風な音楽として広まって行きました。
やがて国境を越え、ヨーロッパ各地で大流行。
クラシック界の巨匠達も魅了され、自らの作品にそのスタイルを取り入れ、素晴しい作品を残しています。
各地に伝わるロマの音楽を採取し昇華させた、リスト(ハンガリー→フランス)の「ハンガリー狂詩曲」、ブラームス(ドイツ)の「ハンガリー舞曲」などは大変有名ですね!
ヨハン・シュトラウス(オーストリア)はオペレッタ「こうもり」の仮面舞踏会のシーンで、魅力的なアリアを書いています。
それはハンガリーの謎の美女に扮して登場するロザリンデ(主人公の妻)が、周囲から怪しまれているのを察知し、「ハンガリー人だという証に!」と「チャルダッシュ」を歌います。
また、チャイコフスキー(ロシア)の「白鳥の湖」、ドリーブ(フランス)の「コッペリア」など、バレエ音楽にも「チャルダッシュ」が登場します。
独特の歌い回しと、耳に残るメロディーライン、躍動感溢れるダンスは徐々に速度を増して高揚し、クライマックスを迎える…
このように文字で表現しなくても、聴けば理屈抜き、直球で迫って来る音楽だと思います。
今回はイタリアの作曲家・モンティの「チャルダッッシュ」をヴァイオリンの水野絵里子さんとの共演でお贈りします。