ワルツ 変イ長調 op.69-1。
「別れのワルツ」と一般に呼ばれているこの作品。
「別れ」と言う副題に似合わぬ、愛を語るような甘いメロディー…
皆さん、何故だと思いますか?
では、ご存知でない方のために、種明かしを!
ワルシャワ時代、ショパンは貴族の子女にピアノを教えていました。
そのひとりに6歳のマリア・ヴォジンスカがいたのです。
しかし、ワルシャワ動乱をきっかけにショパンはウィーンを経て、パリに亡命します。
そして、彼女たち一家はドイツ・ドレスデンに移住したのです。
時は流れ、25歳のショパンは旅行の途中の2週間、ドレスデンを訪れました。
美しい女性に成長した16歳のマリアに心を奪われます。
ショパンが愛する人に捧げた1曲…それが、このワルツなのです!
故に甘く愛を紡ぐようなメロディーあり、ワルツのステップを踏むようなリズムあり…曲全体が幸福感に満ちています。
翌年の夏には1ヶ月滞在し、ふたりは恋に落ち、婚約に至りました。
では何故に「愛のワルツ」ではないのでしょう?
二人の婚約は破棄されてしまうのです!
病弱であったショパンの健康上の危惧、身分の違い、政治的な派閥の違いなど…その理由があるようです。
悲しみの中、ショパンはパリに戻るのでした。
ショパンは彼女のために書いたこの作品を一生出版することはありませんでした。
悲嘆にくれたマリアも生涯この曲を愛奏したと伝えられています。
そして、ショパンの没後、友人で音楽家のユリアン・フォンタナによって出版されました。
「なるほど!それで<別れのワルツ>か!」と納得していただけたでしょうか?
ショパンの私的なラブソングだったわけですね。
今回の演奏はリサイタルのアンコール。
ステージの背景は梅田の夜景と車の往来…